No.1 はじめに
2007年、2008年に自費出版を専門とする中堅出版会社、碧天舎と新風舎が倒産したことなどを契機に、共同出版という出版形態のあり方が社会問題化してきました。
共同出版、協力出版などと称される出版の問題については、2005年に出版された、ブログハンドルネーム「両国の隠居」さんの著書 「38万円で本ができた」 にわかりやすく書かれていますので、その1節を転載しましょう。
■ 「協力出版」という名の甘い罠
「今度、本を出すことになってね」
「買ってよね。本屋にも並ぶから」
ある雑誌社を定年退職した友人が報告にきました。
「すごいですね。どんな内容ですか?」
「何冊ですか?」
「ところで費用は?」
いくつか聞いているうちに、私の方が青くなってしまいました。
「200ページぐらいの上製本で1000冊だよ」
「ん、費用。約300万円ぐらいだね」
「協力出版なんだ。本屋さんで売ってくれるんだよ」
「冗談じゃないですよ。印刷の直接経費だけだと100万円程度ですよ」
「自分で書いたんでしょう。ライターを使っても300万円ならお釣りがきますよ」
「でも編集者が原稿に惚れこんでくれてさ。自社企画に推薦してくれたんだ」
「残念ながら選考から外れたけど、ぜひ本にしたいって電話をくれたんだ」
「原稿もよく読み込んでくれていて、ていねいな評価も手紙でくれたしさ」
「そこまで惚れこまれたんじゃ、よし出版費用はオレが負担しようって決めたんだ」
■ すべてが仕組まれた罠にしかすぎない
この人と同じような経緯で「協力出版」に踏み切った人は多いのです。この出版社の、原稿への美辞麗句を並べた手紙もさんざん見てきました。
最初は、個人に負担を負わせない自社企画として推薦したってところも同じです。最後の選考までいったのだけれど、惜しくも外れたって書き方も同じです。
すべてがパターン化して準備されているのです。マクドナルドの接客マニュアルと同じようなものです。
最初は経費面で出版をちゅうちょしている人に、お金をださせるための方策が完璧なまでに準備されているのです。
ここで紹介した人の原稿は、手がつけられていなかったので引き上げました。120万円で本はできました。もちろん、本屋さんにも並べました。
個人と出版社の経費折半の印象を与える「協力出版」の美名のもとでの客集めです。実際は、経費のすべてどころか、自分たちの利益や宣伝費も含まれています。
もちろん、著者と出版会社が実質的に費用を負担し合う共同出版の場合はこのような問題は発生しません。
しかし、多くの場合は、共同出版、協力出版、共創出版という名称を冠して、あたかも著者と出版会社が費用を負担し合って本を出版するような印象を与えながら、実のところは本の制作費用のみならず出版会社の利益までもが著者の負担とされています。
このことがまさに詐欺そのものではないかと問題にされてきたのです。
「問題とされた共同出版の巻」では、共同出版の実際、法律的問題などについて、掘り下げて説明していきます。
掲 載 項 目
NO.1 はじめに(この上の記事です)
NO.2 共同出版ってな~に?
NO.3 共同出版が批判されているわけ(その1)
NO.4 共同出版が批判されているわけ(その2)
NO.5 共同出版は自費出版?
NO.6 共同出版は違法なの?
NO.7 まとめ
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