NO.4 日本の自費出版の姿
◇ 「自費出版の基礎知識の巻」は次の順序で進みます
NO.1 はじめに
NO.2 自費出版とは
NO.3 自費出版の魅力
NO.4 日本の自費出版の姿 (この下の記事です)
NO.5 日本の自費出版の歴史
NO.4 日本の自費出版の姿
自費出版はどんなジャンルが多いの?
NPO法人日本自費出版ネットワークは、1997年に「日本自費出版文化賞」を創設しましたが、同ネットワークが創設後10年間にこの文化賞に投稿された作品のジャンルや年齢層、男女比などについて、「ひとびとの声が聞こえるー日本自費出版文化賞10年の歩みー」の中で分析しています。
これは日本自費出版文化賞に投稿された作品に限っての分析ですが、投稿数は約1万点に及ぶ膨大なもので、大体において日本で出版されている自費出版本の傾向を示していると考えられます。
前項「自費出版の魅力」では、自費出版する楽しみ、その社会的意義について考えてきましたが、本項ではその分析の1部を紹介し、わが国における自費出版の姿を垣間見たいと思います。
自費出版のジャンルは、文章化、映像化できるすべてのものに及びますが、自費出版文化賞は自費出版本を次のようなジャンルに分けています。
(1)地域文化部門 郷土史、地域史、民族記録、地域人物伝、記念誌他
(2)個人誌部門 自分史、一族史、追悼集、遺稿集、旅行記、趣味等
(3)文芸 小説・エッセイ部門 小説、エッセイ、童話など散文で書かれた文芸
(4)文芸 詩歌部門 現代詩、俳句、短歌など韻文で書かれた文芸
(5)研究・評論部門 研究(人文・歴史・法律・経済社会・理工他)、評論等
(6)グラフィック部門 画集、写真集、絵本等
では、これらのジャンルにどんな比率で自費出版本が出版されているのでしょうか。
分析の結果は、①地域文化部門12.6%、②個人誌部門27.9%、③文芸部門38.9%、④研究評論部門11.7%、⑤グラフィック部門8.9%となっています。
個人誌と文芸部門をあわせると67%に及んでいて、特にその中でも個人史部門で自分史が1番多く、次いで小説やエッセイとなっています。
■ 年齢別にみると
自費出版文化賞の応募者を年齢別にみると、20歳代2.53%、30歳代14.4%、40歳代9.43%、50歳代17.93%、60歳代29.28%、70歳代25.51%、80歳以上9.8%となっていて、総平均が61.8歳です。
50~70代で全体の72.72%を占めています。これは自費出版をジャンル別にみたとき、個人誌部門でも自分史の出版が多くを占めていることと関連がありそうです。自分史を書こうと思うときというのは、定年を迎えて人生にひとつのくぎりをつけたときが多いですからね。
それにしても平均年齢61.8歳というのはいかにも高いといえそうです。高齢者に比べて若者のほうが本になじんでいないとは一概にいえないでしょうから、その原因は自費出版には多額の費用が必要であり、若者にはそんな経済的余裕がないこと、あわせて高齢者と若者の時間的な余裕の違いもかなり影響しているのでしょう。
加えて、今日、インターネット世代の若者は、紙の本を出版するという手間暇のかかることよりも、より簡単に作成できるブログや携帯などの情報発信ツールを活用して、自己表現をしようとしているということもいえると思います。
■ 男女別にみると
応募者数の男女年齢総平均をみると、男性が63.7歳、女性が58.3歳となっています。これは、女性の場合、子育ての終わりを区切りにして創作活動に入り、男性の場合、定年後に余暇を得て創作活動に入る傾向が強いことを意味しているのかもしれません。
ジャンル別に見ると、男女の全体で見れば、個人誌と文芸部門をあわせて67%を占めますが、女性の場合はより極端で、個人誌と文芸部門で全体の80%を超えています。逆に研究、評論部門は男性の3分の1程度にとどまっています。
チマチマと細かいことを調べたり考えたりする性向は男性の方が強いということでしょうか。ちょっと違うかな?
■ 高齢化社会の中での自費出版
わが国では、今後ますます高齢化が進展しますが、その中で自費出版人口が増える可能性があるのかどうかについては見方が分かれています。
あまり可能性がないとの見方は次のような理由を挙げています。
1 今から高齢者に向かう世代には、戦争・戦後体験という、現在の世代のような共通した大きな体験がない。
2 核家族や少子化の進展で家族、親族の結びつきが弱くなり、記録を後世に残す意義もすくなくなっている。
3 今後の世代は、趣味や生きがいの多様化が進み、インターネットなどの情報通信メディアがますます発達することから、本や出版に対する関心も薄れる傾向にある。
これに対して、いやいやまだまだ自費出版人口は増える可能性があるという人は次のような理由を挙げます。
1 老後がますます長くなるが、そのため、人々の知的関心は高くなり、創作や研究などで生涯学習の傾向は現在以上に進む。
2 趣味の多様化が進み、ボランティア活動や旅行、写真、絵画、俳句、短歌など、その結果を記録して形に残しておこうという欲求は今後もますます高まる。
3 今後の高齢化世代は最初のインターネット世代であり、従来の枠を超えた新しい関係を作り出す可能性がある。実際にパソコンなどで高齢者でも情報の作成や発表が可能になったことは、現在までのところは自費出版の市場を拡大する方向に動いている。
どうも、私には前者の見解、すなわち、今後、自費出版人口は横ばいか減少傾向に向かうという方に軍配が上がるような気がしますが、さて、あなたはどう考えますか。
次項「NO.5 日本の自費出版の歴史」では、我が国の自費出版の歴史を概観してみたいと思います。
◇ 「自費出版の基礎知識の巻」には次のような記事が載っています
NO.1 はじめに
NO.2 自費出版とは
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自費出版はどんなジャンルが多いの?
NPO法人日本自費出版ネットワークは、1997年に「日本自費出版文化賞」を創設しましたが、同ネットワークが創設後10年間にこの文化賞に投稿された作品のジャンルや年齢層、男女比などについて、「ひとびとの声が聞こえるー日本自費出版文化賞10年の歩みー」の中で分析しています。
これは日本自費出版文化賞に投稿された作品に限っての分析ですが、投稿数は約1万点に及ぶ膨大なもので、大体において日本で出版されている自費出版本の傾向を示していると考えられます。
前項「自費出版の魅力」では、自費出版する楽しみ、その社会的意義について考えてきましたが、本項ではその分析の1部を紹介し、わが国における自費出版の姿を垣間見たいと思います。
■ ジャンル別にみると
自費出版のジャンルは、文章化、映像化できるすべてのものに及びますが、自費出版文化賞は自費出版本を次のようなジャンルに分けています。
(1)地域文化部門 郷土史、地域史、民族記録、地域人物伝、記念誌他
(2)個人誌部門 自分史、一族史、追悼集、遺稿集、旅行記、趣味等
(3)文芸 小説・エッセイ部門 小説、エッセイ、童話など散文で書かれた文芸
(4)文芸 詩歌部門 現代詩、俳句、短歌など韻文で書かれた文芸
(5)研究・評論部門 研究(人文・歴史・法律・経済社会・理工他)、評論等
(6)グラフィック部門 画集、写真集、絵本等
では、これらのジャンルにどんな比率で自費出版本が出版されているのでしょうか。
分析の結果は、①地域文化部門12.6%、②個人誌部門27.9%、③文芸部門38.9%、④研究評論部門11.7%、⑤グラフィック部門8.9%となっています。
個人誌と文芸部門をあわせると67%に及んでいて、特にその中でも個人史部門で自分史が1番多く、次いで小説やエッセイとなっています。
■ 年齢別にみると
自費出版文化賞の応募者を年齢別にみると、20歳代2.53%、30歳代14.4%、40歳代9.43%、50歳代17.93%、60歳代29.28%、70歳代25.51%、80歳以上9.8%となっていて、総平均が61.8歳です。
50~70代で全体の72.72%を占めています。これは自費出版をジャンル別にみたとき、個人誌部門でも自分史の出版が多くを占めていることと関連がありそうです。自分史を書こうと思うときというのは、定年を迎えて人生にひとつのくぎりをつけたときが多いですからね。
それにしても平均年齢61.8歳というのはいかにも高いといえそうです。高齢者に比べて若者のほうが本になじんでいないとは一概にいえないでしょうから、その原因は自費出版には多額の費用が必要であり、若者にはそんな経済的余裕がないこと、あわせて高齢者と若者の時間的な余裕の違いもかなり影響しているのでしょう。
加えて、今日、インターネット世代の若者は、紙の本を出版するという手間暇のかかることよりも、より簡単に作成できるブログや携帯などの情報発信ツールを活用して、自己表現をしようとしているということもいえると思います。
■ 男女別にみると
応募者数の男女年齢総平均をみると、男性が63.7歳、女性が58.3歳となっています。これは、女性の場合、子育ての終わりを区切りにして創作活動に入り、男性の場合、定年後に余暇を得て創作活動に入る傾向が強いことを意味しているのかもしれません。
ジャンル別に見ると、男女の全体で見れば、個人誌と文芸部門をあわせて67%を占めますが、女性の場合はより極端で、個人誌と文芸部門で全体の80%を超えています。逆に研究、評論部門は男性の3分の1程度にとどまっています。
チマチマと細かいことを調べたり考えたりする性向は男性の方が強いということでしょうか。ちょっと違うかな?
■ 高齢化社会の中での自費出版
わが国では、今後ますます高齢化が進展しますが、その中で自費出版人口が増える可能性があるのかどうかについては見方が分かれています。
あまり可能性がないとの見方は次のような理由を挙げています。
1 今から高齢者に向かう世代には、戦争・戦後体験という、現在の世代のような共通した大きな体験がない。
2 核家族や少子化の進展で家族、親族の結びつきが弱くなり、記録を後世に残す意義もすくなくなっている。
3 今後の世代は、趣味や生きがいの多様化が進み、インターネットなどの情報通信メディアがますます発達することから、本や出版に対する関心も薄れる傾向にある。
これに対して、いやいやまだまだ自費出版人口は増える可能性があるという人は次のような理由を挙げます。
1 老後がますます長くなるが、そのため、人々の知的関心は高くなり、創作や研究などで生涯学習の傾向は現在以上に進む。
2 趣味の多様化が進み、ボランティア活動や旅行、写真、絵画、俳句、短歌など、その結果を記録して形に残しておこうという欲求は今後もますます高まる。
3 今後の高齢化世代は最初のインターネット世代であり、従来の枠を超えた新しい関係を作り出す可能性がある。実際にパソコンなどで高齢者でも情報の作成や発表が可能になったことは、現在までのところは自費出版の市場を拡大する方向に動いている。
どうも、私には前者の見解、すなわち、今後、自費出版人口は横ばいか減少傾向に向かうという方に軍配が上がるような気がしますが、さて、あなたはどう考えますか。
次項「NO.5 日本の自費出版の歴史」では、我が国の自費出版の歴史を概観してみたいと思います。
◇ 「自費出版の基礎知識の巻」には次のような記事が載っています
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