NO.2 自費出版とは
NO.1 はじめに
NO.2 自費出版とは (この下の記事です)
NO.3 自費出版の魅力
NO.4 日本の自費出版の姿
NO.5 日本の自費出版の歴史
NO.2 自費出版とは
自費出版と商業出版ではどう違うの?
本の出版の形態では、自費出版以外に商業出版、共同出版、協力出版、企画出版といった言い方がされることがあります。
本項では、自費出版とこれらの出版形態の違いについて考えていきたいと思います。
■ 自費出版と商業出版
自費出版に対比するのは商業出版です。商業出版というのは、典型的な例でいえば、作家の小説を出版社が出版する場合がこれに当たります。
出版社が自らの経費で出版を企画し小説を出版するのです。作家には原稿料かあるいは売れた冊数に応じて印税が支払われます。
これに対して、自費出版は著者自らが費用を負担して出版社に本の制作を委託します。
販売までをも委託するかどうかは場合によりますが、販売を委託し自費出版本が書店等を通じて販売されることになれば、著者は自らの本を出版社に委託して販売するのですから、流通に必要な諸経費を出版社、出版取次(→掲載ページ)、書店に支払った残りの金額を収入として受け取ることになります。
このように、自費出版と商業出版の違いは、本の制作経費を著者自らが負担するのか、出版会社が負担するかにあります。
では、著者と出版社が自費出版本の制作や販売の費用を持ち合う場合は何出版というのでしょうか。
■ 自費出版と共同出版
もし、著者と出版社が、本当に制作、販売に必要な経費を、例えば折半で持ち合い、自費出版本の販売によって得られた収入も折半するというのであれば、それは共同出版と呼んでいいと思います。
しかし、数年前に碧天舎や新風舎(両社とも数年前に倒産)といった自費出版専門会社が行って、社会的な問題にまで発展した共同出版、協力出版、共創出版といった出版形態は、純然たる共同出版とはまったく異なるものです。
このことは「共同出版」の巻で詳しく説明しますが、これらの出版社が行ってきた出版形態は、共同出版という名称を使って著者を錯誤させ、結局は本の制作経費や流通経費にとどまらず、出版社の利益をも必要経費として著者に負担させるものでした。
つまりは、共同出版はいかにも出版社も本の制作経費や販売費用の一部を著者と負担しあうよう誤解を与えるもので、その実質は自費出版そのものでした。
このような出版社の商法は詐欺商法として社会的非難を浴び、今日、共同出版の名称を冠して自費出版を勧誘する出版社はほとんどみかけなくなりましたが、いつまた、形を変えて新手の商法が現れないとも限りません。
■ 自費出版と個人出版、自装出版
個人出版は、当初、出版にまつわるすべてのことを個人で行うという意味で使われていたようですが、この頃は個人出版という言葉に自費出版とは異なる意味あいを持たせたり、自費出版という言葉の持つ語調や雰囲気を嫌って使う場合もあるようです。
両国のご隠居は 「38万円で本ができた」(2005年2月 太陽出版) で、個人出版についてこう書かれています。
■ なぜ自費出版を個人出版と言い換えたのか。
この本の1番のテーマは、個人でも採算のとれる自費出版です。本来、出版社がおこなっている出版活動の原点は、自費出版のような気がします。自分が書いた1冊の本、あるいは作りたかった1冊の本。その積み重ねを拡大したものが出版社であり、出版事業ではないでしょうか。
この間、出版事業の営利活動の面だけが膨らみ続けてきました。その結果、本来の出版活動の意味が希薄になっているように思います。
もう1度、本を書きたい欲求、そして本を作りたいという夢を出発点に考えます。その欲求や夢の実現方法が、採算のとれる自費出版の方策にあると思います。
私はそれを「個人出版」と名づけました。自費出版を「個人でもできる出版」と言い換えたのです。同時にこれを、個人事業として拡大したものを「1人出版社」と呼んでいます。この「1人出版社」も、規模の問題ではなく、考え方の問題と位置づけました。この「個人出版」でも「1人出版社」でも、採算をとることが重要です。
そのことを書きたくなった背景には、今の自費出版業者の無節操な客集めの現状があります。いかにも経費やリスクを共同で負担しているように思わせながら、その実は本を書いた人に、経費のすべてどころか、自分たちの利益をも上乗せしている「協力出版(共同出版)」という呼び名を使っての商売があります。
さらには、懸賞募集と銘打った客寄せ商売には目に余るものがあります。それらの実態を知っていただくことも、大切なことのように思いました。
ご隠居は、採算のとれる自費出版のことを個人出版と名づけようというわけです。
あるいは、深川昌弘著 「これからの自費出版」(2010年5月 近未来社) では、個人出版に代えて自装出版という言葉を提言されています。いわく
自費出版という言葉は誰でも知ってる言葉ですが、本章のタイトルの自装出版となると、なかなかすぐにはその意味を理解される方はおられないのではないでしょうか。自ら装う出版とは何か。従来の自費出版が「他人に服を着せてもらうもの」であったとすれば、ここでいう自装出版とは、自費出版したいと考えている人がご自身の意思と能力で、ご自身が最もふさわしいと思う服を着せて、本を世に出していくことに他なりません。この言葉は、今から15年ほど前に私が思いついた造語なのです。
私は特に「自費」という言葉がどうしても好きになれません。出版業界に足を踏み入れてから35年が経ちましたが、この自費という語感が醸し出す経済臭・金銭臭には何ともいえない嫌悪感さえ覚えることがあります。それは、自費出版の交渉が制作経費にまつわる価格交渉から始まることに第1の原因がありますが、この金銭にまつわる話は最初だけにとどまらず、追加料金が問題となってくる編集制作の過程や、はたまた販売の段階にまでついて回るとさらにどの度合いを増してきます。誰しもお金のことばかり気にしながらご自身の本を作り売っていくことを由とはしていません。金銭の呪縛から解き放たれて、自由に楽しく自費出版をしていきたいと考えておられるはずなのです。
■ 幻冬舎ルネッサンスの個人出版とは?
最近、自費出版で 「幻冬舎ルネッサンス新書」 という新書をシリーズ化している幻冬舎ルネッサンスも、自費出版の言葉と並べて個人出版という用語を使っています。
しかし、ご隠居の個人出版や深川さんの自装出版と幻冬舎ルネッサンスの個人出版とを同日に論じることは慎重でなければなりません。
というのも、幻冬舎ルネッサンスの商法には旧来の共同出版的側面(自費出版本が販売されたときに著者の得られる利益は印税として算出していること)が色濃く残っているようですから・・・・・・。
■ このサイトでの自費出版とは?
このように、個人出版、自装出版といった表現によって目指そうとする方向性はやや異なる場合がありますが、出版形態という意味では、幻冬舎ルネッサンスは別として、いずれも自費出版に属しているということができます。
このサイトでも、特に必要がない限り、旧来どおり、個人が自費を出して本を制作する出版形態を自費出版と呼ぶことにします。
■自費出版と企画出版
企画出版は商業出版と同じ出版形態であり、単に呼称を代えているにすぎません。
企画出版という名称は、共同出版業者が考え出した名称で、何かの賞を設けて原稿を募集し、投稿された原稿を読んだ担当者が、「あなたの作品はすばらしい。是非に当社から企画出版したいと思い社内で相談したが、残念ながら実現させることができなかった。けれでも、この原稿をこのまま眠らせるのは誠に惜しい」などと甘言を使って、自費出版を勧誘するために考え出された言葉です。
確かに、商業出版というより企画出版と呼ぶ方がなんとなく耳ざわりがいいですからね。
企画出版という特別な出版形態はありません。それは旧来からの商業出版をちょっと格好よく呼び変えただけです。
次項「NO.3 自費出版の魅力」では、自費出版を出す喜びとその社会的意義について考えてみたいと思います。
◇ 「自費出版の基礎知識の巻」には次のような記事が載っています
NO.1 はじめに
NO.2 自費出版とは (この上の記事です)
NO.3 自費出版の魅力
NO.4 日本の自費出版の姿
NO.5 日本の自費出版の歴史
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